Rubyテクノロジーリーダーを訪ねて - 第1回 「まつもとゆきひろ氏」

投稿者: : Hitoshi Fujii

概要: Rubyテクノロジーをリードするキーパーソンを訪ねるインタビューシリーズ。第1回は、Ruby作者のまつもとゆきひろ氏です。


まつもとゆきひろ氏
Ruby言語の作者、株式会社ネットワーク応用通信研究所 フェロー

今、「世界で最も注目を集めているプログラミング言語はRubyである」といっても、過言ではないだろう。Rubyは、言語そのものの 持つ自由さ、柔軟さに加え、Ruby on Railsという強力なオープンソースフレームワークのヒットも手伝って、世界中のプログラマーを惹きつけている。そんな魅力的な言語を開発したのが、ま つもとゆきひろ氏だ。

まつもと氏が、プログラミングの世界に足を踏み入れたきっかけはなんだろうか。

    プログラミングを学ぶ上で大事なことは「続けること」

「実は、中学生のときに父親が買ってきたポケットコンピュータが最初なんですよ。400ステップぐらいのBASICが動く小さいやつで す。父親が自分でやろうとしていたのを、とりあげちゃってはじめたのがきっかけですね。」

きっかけは小さなことかもしれない。しかし、彼のプログラミングを学ぶことに対する姿勢は、今日の成功を予感させるものを感じる。

「プログラミングを学ぶ上で大事なことは、途中でやめないこと。ソフトウェアはやればできるみたいなところがあるけれど、実際できない というときの理由は、続かないからなんですよ。」

プログラミングは地道な作業かもしれない。初心者は、知る喜びから作る喜びに至る過程で、挫折してしまうことが多いのは事実だ。ゴール に到達したときにはじめて得られる喜びが、次に進もうという意欲に結びつくのだろう。しかし、昨今の大規模化、高機能化、複雑化したコンピューティング環 境は、ゴールを遠ざけてしまったようだ。

「特に、僕が子供のときには、400ステップしかない、今でいうと400行しか入らない、だから、小さく始めるしかなかった。例えば、 ゲームでも作ろうかっていうと、昔は、キャラクターがピコピコ動くぐらいのものだったけど、今は、ファイナルファンタジーとか、とてもひとりで作れるもの ではないでしょう。そういう意味では、今の子供たちは不幸かな。身近なところにゴールがない。でも、小さくはじめて大きくつくるのがいいところ。ぜひ続け てほしい。」

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    Ruby誕生にも「続けること」があった

まつもと氏がプログラミング言語をつくりたいと思ったのは、高校生の頃からだそうだ。

「その頃は、わけも分からず作りたいと思って挑戦し始めたんですよ。でも、言うのは簡単だけど、使い物になるものを作るまでは大変で、 なかなかできずにいました。でも15年ぐらい前かな、何回目かの挑戦でうまくいって、それがRubyだったのです。」

個人的な興味から生まれた言語「Ruby」。しかし、それが今や世界で注目されている。実際本人はどう感じているのだろう。

「正直、『びっくり』って感じです。ガートナーが2013年には、Ruby開発者が400万人ぐらいに増加するというという予想をして いて、根拠は分かりませんけど、『いやぁ、すごいことだなぁ』と思いました。」

Rubyの将来はどうなるのだろう。

「ひとつは性能を向上させたいです。今使われているほとんどのジョブのためには、Rubyは十分に性能がある気がしています。でも、 よーいドンで競争すると、その差が本当に重要かは別にして、カタログ上のスペックで劣ることが多々ある。それで採用されないというのも不本意なので、性能 向上はやっていきたいです。それから、今後、いろんな意味で、ソフトウェア開発のスケールがあがっていくでしょう。なんでもできるRubyの自由奔放さ は、個人で開発するにはいいけど、チームでは、迷惑をかけるかもしれない。こうした状況でもコントロールできる方法を探究していきたいと思っています。」

    企業での利用が広がるRuby

RubyはRuby on RailsとともにWebアプリケーション開発で使われることが多い。教育や分析などで使われることも多いという。

「複雑じゃないんだけど、手早く作りたい。そういうところには、Rubyは向いています。銀行の勘定系などで、数千人のプロジェクトと かいうところでは、使われないだろうと思います。でも、最近では、開発を始めた頃には使われないだろうと思っていたようなところにも使われ始めています。 コンピュータの性能向上によって、どんどん状況は変わっていくだろうと予想しています。」

企業での採用を促進するには、企業側のナレッジ、ツールなどの環境、サポートなども重要だ。

「元々Rubyは、ハッカータイプというか、ほっといてもプログラミングできるような人たちから広まってきました。そういう人たちに ツールは要らない。でも、企業に広まっていくと、IDEが必須になります。僕は、Turbo Cとかでプログラミングを始めたので、ボーランドとその血脈のツールには非常に親近感があります。また、商用の安心感もありますし、3rdRailには期 待したいです。」

学校教育で輩出されるRuby経験者も重要だ。近年、大学でRubyを使っているところが増加している。

「卒業研究などでRubyを使う学生が増えてきています。『僕、Rubyわかります』って新入社員が増えてくることが、企業でRuby が広まっていくことにプラスに働くと思います。」

企業での採用では、Rubyの特性を理解しておくことも重要になる。注目されている言語なだけに、うたい文句に踊らされないように注意 も必要だ。

「自分でRubyを作って、Rubyはいいものだと思っているけど、万能だと思っているわけではないです。例えば、Java、PHPで 作っていたものをRubyに置き換えれば、なんでもハッピーということはない。移行のコスト、Rubyの流儀を学ぶコストも考えないと。過度な期待を抱い てやみくもに採用するのではなく、Rubyのいいところを理解してそれを活用してほしいですね。」

まつもと氏は、ネットワーク応用通信研究所(NaCl)のフェローという立場で、自由に研究・開発活動に従事している。Rubyの開発 や、Ruby関係の講演活動、執筆、取材などによって、Rubyの発展に努める日々を送っている。

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プロフィール
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    まつもと ゆきひろ

株式会社ネットワーク応用通信研究所フェロー、および楽天株式会社 技術研究所フェロー、Rubyアソシエーション理事長。Rubyの生みの親。筑波大学第三学群情報学類卒業。鳥取県出身、島根県在住。

プログラミング教育の用途という意味では、Rubyは相半ばあって、Rubyはあんまり教育用に作っていないんですよ。気分よくできるとか、自由できると いうことで、例えば、難しい機能ははずしておこうとか、あんまり考えてない。気分よく書けるけど、なにこのマジックみたいな。実際に授業をしている方から こんな不満を聞いています。Rubyの組み込みのデータ構造を組み込んでいるので、アルゴリズムの授業が難しい。バブルソートとかの説明をしようとする と、『先生、.sortって呼べばできちゃうよ』と言われちゃう。モチベーションが下がっちゃうんだそうです。あと、Rubyは奥が深く幅が広いので、と ても1年ぐらいの授業ではカバーできない。さわりだけで終わっちゃったとか。でもどうしょうもないですよね、これは(笑)。


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